関係者によると、この男性は群馬県伊勢崎市でパチンコ台を回収し、部品の液晶パネルを中国・香港に輸出する事業などをしていたが、平成20年12月までの事業所得を申告していなかった。
男性は東京都港区にある日本人男性が経営する会社名義で輸出していたほか、自分名義ではない借名口座を使うなど所得隠しとみられる手口を使っていた。男性が事業を行っていた物流会社は登記をしていなかったという。
国税局はこの男性が香港に所有している口座を調べ、数十億円の金の流れがあったことを解明。このうち経費を除いた部分を所得隠しと認定した。
関係者によると、男性は「香港で税務当局に申告していた。二重課税だ」と異議申し立てをするとともに、「支払い能力がない」と主張しているとされる。
ただ、男性の所得のほとんどは香港の口座にあり、国税当局が徴収するのは困難とみられる。
業界関係者によると、使用済みのパチンコ台には液晶パネルが組み込まれているため、リーマン・ショック前までは中国でカーナビなどに転用され、高値で取引されていたという。男性を知る関係者は「男性は銅線が北京五輪前に値上がりしてもうけたようだ」と話している。
■香港に送金、条約なく徴収困難
関東信越国税局に所得隠しを指摘された台湾籍の男性は、所得のほとんどを香港の口座に送金していた。日本の国税当局は男性の所得を差し押さえたい意向だが、日本は香港に移った金に課税できる条約を結んでおらず、徴収はほぼ不可能に近い。
外国人が日本で得た所得を納税しないで海外へ持ち出す事態を防ぐため、日本は今年5月現在、中国を含む58カ国と47の租税条約を結び、日本での所得は海外に移転されても日本国内の税法に基づき課税できるようにしている。しかし、香港とは締結していない。
香港は中国の特別行政区だが、独自の税制をとっており、税に関する条約も独自の立場で行っている。香港内の法人が香港外で獲得した所得は課税されない上、税率が低く、ペーパーカンパニーも廉価で作ることができるため、「アジアのタックスヘイブン」として知られ、税逃れに利用されると指摘されていた。
ただ、先進国から税逃れへの批判が強く、香港は今年、経済協力開発機構(OECD)加盟国では初めてオランダと租税条約を結び、批判をかわそうと懸命だ。日本の国税当局もこうした動きに呼応し、香港を含む多くの国と租税条約を締結しようと、関係機関への働きかけを強めている。(三枝玄太郎、花房壮)




